厳しい夏も終わりに近づいて、朝晩が少し涼しく感じられるころ、市場に秋刀魚が出てきます。この間、フランス人の友人から「秋刀魚をもらったんだけど、焼き魚にするときはどうしたらいいのか」と聞かれました。「下処理は何も要らない。塩をふってただ焼くだけだよ」と答えながら、珍しい魚だなと思いました。店ではワタは取ってから調理する魚がほとんどだし、鯵や鰯もうろこはとらなければいけないし。ただ丸ごと焼く(出来れば炭で)、そんなシンプルで原始的な食べ方が最もおいしい魚なのです。すだちやかぼすをかければ、もう言うことはありません。
いつも通っている築地の魚屋さんお勧めの、特別な秋刀魚を買ってきました。取れたその日の朝のうちに航空便で届くそうで、木の樽に入ってます。秋刀魚という魚は鮮度がいいと本当に美しいです。氷水に浮かぶ小さいうろこは、ウルトラマリンブルーとでも形容したくなるような、まるで海の色を映したような青です。
店ではお造りでお出ししたのですが、やはり秋刀魚はワタがうまい!ということでワタ醤油を作ってお造りに添えました。お刺身のおいしさに、焼魚の風味が加わった感じになります。
作り方は簡単です。①ワタを取り出し包丁でたたいて②煮切り酒とお醤油を混ぜたものに加え③鍋に入れ火にかけ④ひと煮立ちしたら火を止め、漉す。これだけの手間です。新鮮なさんまが手に入ったら、是非、試してください。
旬のものを当たり前においしく食べる。それがなかなか難しい時代ですが、一番の幸せだなと最近よく思います。