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蒔の四季 10

2014/8/6

蒔という店は本当にお客様に作ってもらっている店だなあと実感しています。

一年間毎月メニューを変え、四年経ちました。自分たちが良いと思うもの、おいしいと思う料理をお出しして、それがお客様に伝わった(喜んでくれた)ものだけが、残っていきます。冬瓜と白いとうもろこしのジュレもそんな料理。年々進化して今の形になりました。
 

 
七月のご飯ものは超シンプル。炊き立てのご飯に新生姜、塩を混ぜただけ。蓮芋の赤だしが付きます。「白い御飯がおいしい」と喜んでくれるお客様が多いことから作り始めました。

蒔の四季 9

2014/8/6

とにかく暑い日が続くので、冷たい炊き合わせを作ろうと思いました。
 
翡翠茄子は、素揚げした茄子を氷水で冷やし皮を剥き、鷹の爪をピリッときかした出汁に漬け込み、少し塩味をつける。
 
青菜のお浸し、わかめ菜というヌルッとした触感の野菜を使う。お浸しにするフリーゼというフランスの野菜、パセリもお浸しにして細かく刻み、わかめ菜にまぜる。
 
白瓜はぬか漬けにした後、青梅で作った少し酸っぱくて甘い地で絡める。食べられるほうずきを飾る。
 
最後に絞り生姜をして清涼感。暑さがすっと引くような料理を心掛けました。

蒔の四季 8 日本で最も美しい村

2013/9/19


 
杉一浩さんが理事をしている、「日本で最も美しい村」連合、その活動が素晴らしい本になっています。
 
オビにもある通り、日本の本当の美しさに焦点を当て、北は北海道美瑛町から、南は沖縄多良間村まで44の町村が紹介されています。いわゆる一般的なガイドブックと違い、熱意とセンスが満載のアーティスティックな本で、未来につながる普遍的な内容だと思います。
 
「美しい村」の美しさとは、そこに住む人の土地や自然への愛を映しだしているものだと感じます。
 
蒔にも置いてありますので、是非ご覧ください。

蒔の四季 7 新子

2013/8/11


 
夏の暑い盛り、さっぱりと〆た新子は格別に美味しいです。新子→コハダ→コノシロと名が変わる出世魚ですが、江戸前ののお寿司屋さんでは小さいほうが粋とされています。小さいので下ろす時非常に手間がかかりますが、ひとつひとつ丁寧に手早く包丁を入れていきます。
 

江戸前寿司の伝統的な技法で〆ます。
 

 
スライスした冬瓜の上に新子を並べ、塩とかぼすでシンプルに味付けし、夏らしいお皿に仕上げました。
 
築地に通い始めて四年余り、蒔では江戸時代から続いている老舗「佃井」から魚介類を仕入れています。代用の利かない本物の魚介しか置いていない魚屋さんです。旬のもの、最高のものを常に追い求めるその姿勢から多くのものを学ばせてもらっています。
 
文化と呼ばれるものの中には、魚の目利きなど形にしづらい後世に残しにくいものもあるんだな、と感じています。言葉にしにくいのですが、淡くて儚いような、でも力強い文化を料理で表現していきたいです。

蒔の四季 6 粋な野菜冬瓜

2013/7/11


 
冬瓜は好きな野菜で、初夏から夏にかけてよく使います。
 
鶏肉などのひき肉と一緒に煮るのが一般的ですが、炒め物や煮物、サラダなど冷たい料理やラーメン、カレーの具まで幅広く美味しく使えます。
 

 
皮の剥き方に少しコツがいります。包丁を立てるようにしてこそげ落とすと、うすい黄緑色がきれいに残ります。その後表面を塩でこすり、水で洗い流すと、透明感のある翡翠色になります。うすくスライスしてオリーブオイルと塩をかけるだけでも、さっぱりして美味しいです。
 

 
他の素材の味をよく吸い込むので料理によっていろいろな表情を見せてくれる便利な野菜です。

蒔の四季 5 つばめ生姜

2013/5/30


 
毎年5月頃になると市場に出てくる谷中生姜。
 
何本かの根っこをつながったままスライスすると、かわいいつばめの形になります。
 
今年はつばめの姿をあまりみかけませんでした。ちょっと残念。来年に期待したいです。
 

 
近海ものの白ぎすはやっぱりおいしいです。
 

 
生の桜海老。世界中で日本の駿河湾でしか捕れません。

蒔の四季 4 めざめの春

2013/2/14


 
大人になるとわかってくる味に、ふきのとうやたらの芽があります。春を感じさせるほのかな苦味がおいしいです。
 
この時期はうるい、菜の花、九州地方の蕾菜、蕨、もう少しするとこごみや竹の子が出てきます。これらの山菜の苦味は胆のうを刺激して唾液を出し、食欲を促す味です。共通して揚げ物にするとかどが取れておいしさが増します。
 
冬眠から目覚めた熊はふきのとうを食べ、胃を活性化させるそうで、まさに「春の味」ですね。フランスでは春にたんぽぽ(ピッソンリ)をサラダにしてたべます。半熟卵と香ばしくいためたベーコンを散らします。
 
五月頃はホワイトアスパラ。最近は日本でも作っていますが、やはりヨーロッパのものには風味の点でかなわないように思います。それと一年中あるけれどアンディーブ(日本ではチコリ)も独特のいい味です。
 
鴨鍋を作るとき、春菊の変わりにアンディーブをたっぷり入れて食べていました。意外と合います。甘じょっぱい味に合うのですき焼きでもおいしいです。

蒔の四季 3 早春の食材

2013/1/30

最近使っている食材をいくつか紹介します。
 
ほうぼう
 
早春の寒い時期が旬です。昔、殿様に献上したことから、君魚(きみうお)と呼ぶ地方もあります。よく出汁が出るのでフランスではブイヤベースに使います。ユーモラスでかわいい表情で赤い色が濃いほうがおいしいです。
 
青身大根
 
京都の小さな大根で、すっと細長い姿形がきれいな野菜です。小さいけれど存在感のある味で、煮物にしたときのホクホクした食感が個性的です。味付けは薄味が合います。
 

 
炭や重曹を使ってアク抜きをすると、とても美しい黒に近い深緑色に変わります。うまみが強く山菜の本当のおいしさを実感できます。火を加えることでその素材の隠れた色が現れるとき自然ってすごいなと感じます。塩煎りした銀杏の翡翠色、薄皮を剥いた冬瓜の淡いグリーンを見た時などは、同じような感動を覚えました。
 

 
おいしい鯖はくさみがないので、〆鯖はもちろん煮物、焼き物、何にでも使います。一月は大阪の船場汁をヒントに考えた鯖の煮物を作っています。

蒔の四季 2 秋の食材

2012/10/16

日本らしい秋の料理に”吹き寄せ”があります。
 
栗、しめじ、南瓜銀杏、人参、蓮根、牛蒡など、秋の素材にそれぞれ下味をつけ、煮たりあげたりして一皿に盛り付ける、楽しい料理です。紅葉の葉や、松の葉を飾ったりもします。銀杏の翡翠色や菊の花の黄色を少し加えるとよりきれいになります。
 
秋風に吹かれて吹き寄せられるように、ばらばらっと自然な感じで具材を散らすのがポイントで、あまりきちっとそろえてしまうと格好悪くなってしまいます。法則があるようなないような、こういう盛り付けの仕方は日本独自のもので、海外でほかの国の人たちと仕事をするとき、説明が難しいものでした。日本人同士なら「自然な感じで」で通じるのですが、、、。
 
この季節になると、魚介類もだんだんと脂がのってきてコクが出てきます。”旬の食材”は、夏はさっぱりしたものが多く、秋になるとこってりしたものが増えてきて、そのときで一番おいしく感じられるように、うまく出来ているようです。
赤かますは秋が旬です。開きになっている水カマスに比べ、どこか上品なすがたかたちをしています。皮目を炙って、お刺身で食べると抜群においしい。店では棒寿司にしています。
 
それから今年は天然のクエを使ったりもしています。”アラ”とも呼ばれる高級魚で、天然のものは大変貴重です。タイミングが合ったら皆さんに味わってもらえるとうれしいです。
 
紅葉はもう少し先ですが、食材を通して一足先に”秋”を満喫している毎日です。
 

蒔の四季 1 秋刀魚のこと

2012/9/15

厳しい夏も終わりに近づいて、朝晩が少し涼しく感じられるころ、市場に秋刀魚が出てきます。この間、フランス人の友人から「秋刀魚をもらったんだけど、焼き魚にするときはどうしたらいいのか」と聞かれました。「下処理は何も要らない。塩をふってただ焼くだけだよ」と答えながら、珍しい魚だなと思いました。店ではワタは取ってから調理する魚がほとんどだし、鯵や鰯もうろこはとらなければいけないし。ただ丸ごと焼く(出来れば炭で)、そんなシンプルで原始的な食べ方が最もおいしい魚なのです。すだちやかぼすをかければ、もう言うことはありません。
 
いつも通っている築地の魚屋さんお勧めの、特別な秋刀魚を買ってきました。取れたその日の朝のうちに航空便で届くそうで、木の樽に入ってます。秋刀魚という魚は鮮度がいいと本当に美しいです。氷水に浮かぶ小さいうろこは、ウルトラマリンブルーとでも形容したくなるような、まるで海の色を映したような青です。
 
店ではお造りでお出ししたのですが、やはり秋刀魚はワタがうまい!ということでワタ醤油を作ってお造りに添えました。お刺身のおいしさに、焼魚の風味が加わった感じになります。
 
作り方は簡単です。①ワタを取り出し包丁でたたいて②煮切り酒とお醤油を混ぜたものに加え③鍋に入れ火にかけ④ひと煮立ちしたら火を止め、漉す。これだけの手間です。新鮮なさんまが手に入ったら、是非、試してください。
 
旬のものを当たり前においしく食べる。それがなかなか難しい時代ですが、一番の幸せだなと最近よく思います。